言いたいことは次のような事だと思う。個人投資家は、情報収集の早さという観点で機関投資家には絶対に適わない。だから、短期投資ではなく、地に足の付いた思考力・判断力を身につけ、消費者としての視点を活用して中・長期投資を行えば、プロにカモにされずに利益を得られる。
この本の最後のコラムに載っていたけど、彼の株を始めた切っ掛けが面白い。あるとき病気にかかり、数ヶ月仕事ができなかった。そこで、パソコンを覚えた。すると、懸賞に応募することになり、懸賞の景品には映画の試写会が多かった。すると、事前にヒット映画を知ることができるので、映画会社に株式投資するようになったそうな。そして、4ヶ月で2,000万を稼いだそう。高校3年生のときに、偏差値を30から80に挙げて東大に入った彼ならありそうな話だ。
以下、内容のメモ、備忘録。
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はじめに
- 日本では、資金の流れが「間接金融」(個人と企業の間を銀行が介入する投資)に非常に偏っており、「直接金融」(個人が企業に直接融資すること)にいかない。そのため、リスクが銀行に偏りすぎている。
- 日本国の借金(国債)の多さからして、国には頼れないから、自分自身を守るため、日本経済を活性化させるためにも、直接金融に資金を回すべき。
第1回:上昇相場に騙されない「株式チャート」の読み方
- 買いたい株が現れたら、取り敢えず5~10年のチャートを見て、高い山の上の方にいるのか、低い山にいるのか見て、高い山なら避ける習慣を身につける。
(この点は、1冊目に読んだ二階堂重人の本にも書いてあった。高い階段から落ちると大けがするけど、階段の下の方から落ちても擦り傷で済む。) - IR情報(IR=Investor Relations 投資家に対する広報<=>PR=Public Relations 一般の人に対する広報)をこまめにチェックする。
- 株価が大幅に下落した場合にも、利回り=(配当)/(株価)*100 (%)などを計算すれば、どこまで下落するかなども予想できる。論理的に行動することが重要である。
第2回:プロにカモにされないための「情報」との接し方
- 情報はまず機関投資家によって掴まれ、彼らは株を大量に安く買い集める。株価の上昇に気付き、もしくは、公にされた情報によって個人投資家が株を買い始め、株価が上昇する。十分に株価が上がったところで、機関投資家は売りに出て利益を得る。そうして、個人投資家はプロのカモにされる。
- プロにカモにされないためには、情報を得たときに、その情報が本当に新しく、まだ株価が上昇していない場合に限り買うようにする。
第3回:個人投資家の“強み”を最大限に生かす「銘柄選別法」
- 情報の早さでは機関投資家には適わないので、個人投資家は“生活者としての目線”をフル活用して「ヒットする可能性の高い商品」を見つけ投資する。
- よいCMはヒットに繫がり易いし、企業は自信のある商品にはお金をかけて広告を出すため、テレビCMはヒット商品の情報源。
- ヒットしそうな映画、家族や身の回りの人がハマっている商品を見つけたら、関連株を買っておくのも一法。
第4回:“西武鉄道の上場廃止”に学ぶ「情報判断力」の磨き方
- 2004年西武鉄道は10位までの大株主の持ち株比率が80%を超えていた(1年以上続くと東京証券取引所では上場廃止となる)にも関わらず、有価証券報告書に過少に記載したなどして、上場廃止の危機に陥った(監理ポストに置かれた)。
- 株価が暴落したが、暫くして、上場廃止にあはならないのではないか、という情報が流れ、株価が上昇に転じた。(その後、本当に上場廃止になった。)
- このようなとき、個人投資家は、会社に直接電話で取材するなどして、世間の情報に踊らされずに正確に判断する材料を集める必要がある。
- 日テレも類似した事案で上場廃止の危機に陥り、株価は暴落したが、冷静に考えれば上場廃止にはならないのは明らかで、その時の安値で買った投資家は利益を得た。
- このように、何かの理由で株価が下落したときは、チャンスなので少し先の将来を見て素早く行動できるようにしておく。
- 遠回りなようでも、経済の勉強をしないと情報判断力を身につけられない。
第5回:個人投資家に最も適している「中・長期投資」の考え方
- 長い目で見れば株価は企業の実力と一致するので、情報の早さに依存しない中・長期投資ならば、プロと対等に戦える。
- ヒット商品を出している企業や、定番のヒット商品を持っている企業は大ヒット商品を出す基盤を持っている企業であり、中・長期投資に向いている。
- 視聴率のよいドラマを放映しているテレビ局は、高い広告収入を得られ、ヒット映画を作るポテンシャルもあるので、投資に値するが、流行物なので中期投資(4~5年)に向いていると考えるのが無難。
- 映画会社の株も、興行成績、お抱えの監督、二次市場(DVDの売り上げやテレビ放映権料)、提携している海外映画会社、などを判断材料に中期投資の対象にできる。
- 製品化に目処が立っていないデバイスの開発などが発表されても、市場を握る機関投資家・ヘッジファンドは参入しないので、すぐには上がらないが、将来的には(例えば20年先には)上がる可能性が高いので長期投資の判断材料にはなる。
第6回:株を売買する際の「原則」と「心構え」について
- 個人投資家は基本的に(短期間の投機ではなく)中・長期的な投資をするつもりで買う。
- 予想を超えて大幅に上がった時などは、欲を出さず利益を確定させておく。
- 利益確定した株がその後値上がりしても、縁がなかったと他の銘柄に切り替える。
- 利益確定した株がその後値下がりしたら、割安と思える水準(例えば、配当利回りが1%以上)まで下がったら、買い戻してもよい。
- 中・長期投資で買ったなら、事故や想定外の事態により株価が下がっても一喜一憂しないで、数ヶ月株価を見ないぐらいの余裕が必要。そのためにも、余裕資金で行うべき。
用語説明と補足
- 年初来高値:その年の最高値。
- 配当利回りが小さいときは、株価が高くなっていると考える。
- インサイダー取引:会社の関係者・会社を辞めて1年以内の人や、それらの人から得た内部情報を基に株を売買すること。
- 値幅制限:1日の株価の上下制限で、前日の終値から上下に100円や200円などと決められている。値幅制限いっぱいまで上がった(下がった)場合をストップ高(安)という。
- 午前中の株式市場9:00~11:00を前場(ぜんば)、午後12:30~15:00を後場(ごば)という。
- 東証(東京証券取引所)では上場廃止の可能性が出てくると、監理ポストという特殊な場所に置かれ、上場廃止が決まると、整理ポストという場所に置かれ、一定期間だけ最後の取引が許されることになる。
- 投資信託:プロが個人投資家などから資金を集め、様々な金融商品に分散して投資・運用すること。
- ヘッジファンド:公募によって資金を集める投資信託とは異なり、富裕層や機関投資家から私的に集めた資金により、デリバティブ(金融派生商品)や空売りなど様々な手法を用いて利益を追求すること。