- 「応募してきた経緯(動機)を教えて下さい。」
企業の面接なら定番中の定番なのだろうけど、「普通の就活」をした経験がないアカデミア公募戦士にとっては「意表を突かれた」と言ってもよい質問かも知れない。かく言う自分も初めて訊かれたときは
「パーマネントをゲットして、あったかいおまんま食いながら研究したいからです。」
って言いそうになったけど、そこはぐっと堪えて
「ようやく研究者として独り立ちできる自信が付いてきたので、学生の教育や若手の育成に携わりながら研究成果を社会に還元できたらと思い、それらに力を入れて取り組む貴学の理念に共感し・・・・」
といった様なことを言ったような言わなかったような記憶がある。よい子の皆さんは予め備えましょう。 - 「着任したらどのようなウェイトで研究と教育に取り組みますか?」
これはかなり意地悪な質問だけど定番である。
多分この質問に関する模範解答はない。教育重視の大学で「研究に重きを置きたい」なんて言ったらアウトかも知れないし、逆も然りである。実際、ある面接(私立大学任期付き助教)で
「採用して頂けたら、初年度は授業の準備に力を入れたいです。」
と言ったら
「いつ研究するんですか?」
ってツッコまれたことがある。
狙っているポジションで求められているのは何か(研究なのか、教育なのか、運営なのか、地域貢献なのか、全部なのか)を考えて答えを用意しておいた方がよいかも知れない。
または、後々のことを考えて、本心をぶちまけておく(宣戦布告しておく)という方がよいという考えもあるだろう。後々のこととは、例えば、教育は片手間でしかやる気は無いのにも関わらず忖度して
「教育8割・研究2割でやります。」
てなことを言ったばっかりに着任してからコマ(授業)を大量にあてがわれてしまう、といった事態である。まぁ、圧倒的な買い手市場のこの状況で上のような強気な発言をできる方はこの記事は読んでないと思いますが。 - 「最後になりますが、そちらから質問はありますか?」
これも面接の最後にほぼ必ず訊かれる。自分も最初は「こちらから質問なんてとんでもございません」的な感じで
「特にありません」
と答えていた。でも、だんだん面接の数をこなして不採用が続いていくうちに少し面接官の気持ちを考えるようになってきた。そうすると「特にありません」って言うのは、つまらない答えだし、下手したら
「うちの大学にあまり興味がないのでは?」
と疑う面接官がいるかも知れない、と考えるようになった。
また、質問されて答えてばかりという面接の場で、質問するというのは自己アピールできる(個性を出せる)数少ないチャンスなのではと思い始めた。それからというもの「特にありません」はやめて、着任後の業務のこと・学生の様子・大学のポリシーのことなどいろいろと質問するようにした。
この考えは大きくは間違っていないと思う。面接官の記憶に残るって事はかなり重要だと思う。 - 「どうして出身大学へ戻らない(就職しない)のですか?」
「科研費を1人で申請しているのですか?」
これら2つの質問は某私立大学助教(テニュアトラック)への面接で語学の先生らしき人からされた質問である。ありのままを正直に答えたが、何故このようなことを訊いてきたのかその場では理解できなかった。
後でわかったのは、この面接官は小生が大学院時代の指導教官や周囲の研究者達と上手く付き合える人間かを非常に気にしていたから、これらの質問をしたようである。
年に数人のオーダーで一人の指導教員から博士が輩出されるような理系では出身校に戻るというのは稀であるが、文系なら学位を獲った大学に戻るのが(獲る人が少ないから)よくある話なのだろう。だから
「こいつは指導教員と喧嘩したから出身校に戻れないのでは?」
と勘ぐったようである。
皆さんが同じ質問をされる可能性は限りなくゼロに近いが、ここから得られる教訓は、面接官は「この人が職場に来たら仲良くやっていけるか?」(つまり人柄)とか「雑用をちゃんと分担してくれるか?」(つまり協調性)といったことを必死に観察しているという事実である。研究分野が異なる人と一緒に仕事をする場合、研究業績なんかより人柄のほうが何十倍も重要だったりもするからである。勿論、横綱研究大学なら人柄なんて全く目もくれない場合もあるけど。
自分がポスドクのとき、大学院時代の指導教官に推薦書を依頼したら
「何で現所属のホスト(受け入れ教官)に頼まないのですか?ホストと仲良くやっていけてないと思われますよ。2通以上必要なら書きますが。」
って言われたことがある。これらのことから、現所属の人々と良好な関係を保っているということも大切だということがわかる。「人間関係が良好であること」をアピールするのは難しいけど、「人間関係が良好でないこと」がバレた場合には確実に落とされると考えた方がよい。
だから、面接の場で、現所属機関に関する不満や所属する人々の悪口を言ったりするのも御法度である。現に、これをやらかして、それが原因で落とされた人を知っている。 - 「研究内容を素人にも解るように簡単に説明して下さい。」
面接には「研究内容に関するプレゼン」「教育に関するプレゼン」「模擬授業」などが含まれていることがあるが、特にメニューがなく、面接官の前にテーブルを挟んで座り、雑談形式で進む場合もある。この質問はそのような面接で訊かれたことである。
研究の内容を手短に素人にでも解るように説明できるよう用意しておいた方がよいだろう。そこで大事なのは、研究費の申請書とかでも同じだけど、正確さより解り易さである。可能な限り、嘘のない範囲で研究の内容をデフォルメして、子供(6歳児ぐらい)でも解るようにしておくことである。
面接官が本当に知りたいのは、研究内容ではなく噛み砕いて説明する能力である。ぐらいに思っていた方が良い。研究内容を噛み砕いて説明できるかを見れば、授業の技量なども測ることが出来るし、その人が自分の研究をどの程度客観視できているかということも知ることが出来る。非常に便利な質問なのだろう。
科研費が通らない人の申請書を読む機会があったけど、正確さを追求するあまり文章が難解で、結局何が目的で研究のどこが売りなのかさっぱり理解できなかった記憶がある。
研究者にとって「嘘のない範囲でデフォルメして分かり易く・面白くする」という技法はあらゆる場面(公募書類・面接・研究費申請書など)で役立つから身につけたいところである。因みに「6歳」というのはアインシュタインが「6歳児に説明できなければ本当に理解しているとは言えない」と言ってたからで、あまり深い意味は無い。 - 「現在所属の大学はJABEEには取り組んでいますか?」
理工系への就職を目指していながらJABEE(程度のこと)を知らないのは致命傷に成りかねない。研究者としては知らなくていいことでも、公募戦士たるもの知らないといけないこともある。
知らない人は、ここにも書いたけど、一度でよいから今日的な教育機関としての大学という場で、どのようなことが日頃問題となっているのかを勉強するとよい。
因みに自分の知人は同じ(JABEEに関する)質問を受けて「知りません」と答え、不採用となったそうである(これが決定的な理由だったかは不明だけど)。
他にも沢山質問されたけどキリがないので今日はここまでにする。質問を列挙しているサイトは他にもあるので参考にして頂きたい。また、実際に面接に臨んだ後は、質問内容などをメモして残しておいた方がよい(忘れるわけないと思っていても絶対忘れる)。
数物系では、都市部の大学なら応募者数がオーダー100、面接に呼ばれるのがオーダー5、その内1人が内定をもらうという感じである。だから、第0近似で応募者の実績が同じとすると、100回応募すると5回面接に呼ばれて、その内1つの大学から内定をもらえる確率になる。自分の場合、先輩にそう教わって、本当にそうなった。
だから、これまで100件程度かそれ以下しか応募してない公募戦士がいたら、それは「単に手数が少ないだけ」の可能性が高いということは強調しておきたい。ちょっと異常な状況だし、一つ出すだけでも相当魂を磨り減らすのは知っているけど、上の計算はそんなに悪い近似ではないようである。
自分の場合、ポスドクの任期が切れそうになってきて、「無職」の2文字がチラつき始めたころ、やりまくっていた非常勤講師の教育経験が買われ始め、面接に呼ばれるようになった。ところが、どれも採用には結びつかず少しヤケになって
「ソツなくこなすより、面接官の印象に残るようにしよう」
と作戦変更したら内定をもらった経験がある。
一般に、面接には面接の数だけ(書類審査にはない)ドラマ・大逆転が有り得る。自分の魅力を十二分にアピールできるよう可能な限り準備をするべきだろう。少なくともそうすれば失敗を次に生かすことが出来る。
数物系では、都市部の大学なら応募者数がオーダー100、面接に呼ばれるのがオーダー5、その内1人が内定をもらうという感じである。だから、第0近似で応募者の実績が同じとすると、100回応募すると5回面接に呼ばれて、その内1つの大学から内定をもらえる確率になる。自分の場合、先輩にそう教わって、本当にそうなった。
だから、これまで100件程度かそれ以下しか応募してない公募戦士がいたら、それは「単に手数が少ないだけ」の可能性が高いということは強調しておきたい。ちょっと異常な状況だし、一つ出すだけでも相当魂を磨り減らすのは知っているけど、上の計算はそんなに悪い近似ではないようである。
自分の場合、ポスドクの任期が切れそうになってきて、「無職」の2文字がチラつき始めたころ、やりまくっていた非常勤講師の教育経験が買われ始め、面接に呼ばれるようになった。ところが、どれも採用には結びつかず少しヤケになって
「ソツなくこなすより、面接官の印象に残るようにしよう」
と作戦変更したら内定をもらった経験がある。
一般に、面接には面接の数だけ(書類審査にはない)ドラマ・大逆転が有り得る。自分の魅力を十二分にアピールできるよう可能な限り準備をするべきだろう。少なくともそうすれば失敗を次に生かすことが出来る。