2021年10月10日日曜日

自*未遂者と警官と

 昨日は土曜だけど大学へ行き10:00くらいから仕事をしていた.16:30くらいに帰ってきて,借りている月極駐車場に車を停めると50代くらいの男が助手席の窓をノックしてきた.その前に異様なほど目が合ったので「なにガンくれてんねん」と因縁を付けてきたのかと思って少し窓を開けると「YR橋ってどこ?」って聞いてきた.あっちですよと橋の方を指差すと「金払うから,ちょっと乗せてって」と言う.「いやいや,近いから歩いて行って下さい」と言うか言わないかのうちに,ドアを開けて乗り込んできた.かなり酔っぱらっている様子.無理やり降ろすより連れて行った方が早いと思ったので乗っけていくことにした.YR橋とは,家から700mくらいのところにある市のシンボル的な釣り橋.何でYR橋に行くのかと聞いたら「思い出の橋だから」と言う.


橋に着くと,橋の真ん中あたりで降ろしてくれと言う.後続車もいるから無理だと言って,橋を渡り切ったところに車を停めると「川へ飛び込む,さいなら」みたいな事を言ってドアを開けたから「止めろ」と言って左腕をつかんで説得にかかった.「何があったか聞いてやっから」とか,「地元はどこか?」とか,「いい身なりして何の仕事してんだ?」とか(これは本当で小ざっぱり散髪してちょい悪オヤジ風で,少なくともみすぼらしくはなかった),いろいろ気を紛らわそうとしたけど,飛び降りるの一点張り.こういう時は自然とakt弁っぽく喋るという自分に気付いた.


そのうち,荷物を車に置いたまま,制止を振り切って橋の方に歩き出してしまったから,自分も追いかけながら110番して「YR橋にいるけど見知らぬ男性が身投げすると言って聞かないから早く来て下さい」と伝えた.すると「すぐ向かいますから時間を稼いでください」と.そのとき我々のいた海側の歩道の欄干には風よけの高いアクリル板が付いていて飛び込めない.すると男は車道に出て,反対側の歩道に移動して欄干に手を掛けた.また腕をつかむと,今度は「止めるな.こんどやったら殴るぞ」とファイティングポーズ(勘弁してくれ).肩を組んで「話聞いてやっから,今日飛び込まなくてもよかんべ」と言って大外刈りして,抑えつけたところにパトカー到着.


じき警官がいっぱい来て二人が男を確保.一人が自分のところに来て事情とか名前とかを聞かれた.ただ,その男は警官の制止を振り切りまた欄干の方に走り出したりして結構危ない状況.「ちゃんと捕まえてないとダメだよ!」と警官に自分が注意する始末.男の荷物が僕の車にあると伝えて,それを取りに皆で自分の車とパトカーがある橋の端まで移動.そこでサヨナラかと思いきや,やはり署まで来て話をということに.この手の出来事では,調書を作るのを目撃者が長時間手伝わされるというのを知っていたけど,暇だし承諾.


警察に電話したのが16:47ぐらい.署に行ったのが17:30くらいか.案の定,調書を作るのにずーーーーーっと付き合わされて21:00ぐらいまで取調室(ダミー鏡のあるテレビで出てくるあの部屋)に拘束された.でも,カツ丼どころか茶も出てこなかった.仕事内容(何の研究していて今日は何の作業をやっていたのかとか)とか,根掘り葉掘り聞かれた.


聞くところによると,何もなければ荷物を渡してサヨナラだったのだが,男を引き渡した後,どこかの時点で男が暴れてパトカーを蹴ったらしく,コウボウ(公務執行妨害)でゲンコウ(現行犯逮捕)されたらしい.その現場に居た第三者が僕だけで,そのせいで署に連れてこられたという説明を受けた.あのとき,あの若手警官二人がちゃんと男の動きを封じていればそれで済んだというオチ.


調書を作った後はパトカーのところに行ってパトカーに付いている男の足跡を僕が指をさしているところを鑑識の人に写真を撮られり,粘着シートで足型をとり,そこに指印を押させられたりした.それは楽しかった.


まあ,あの男がどのくらい本気で飛び込もうとしていたかは分からない.本当に死にたいなら誰にも言わないで静かに飛び込めばいい話だ.警察に電話しろみたいなことを車の中で言っていた気もするし,今の自分を止められるのは警察くらいしかいないと分かっていたのかもしれない.だから,パトカー蹴ったのもワザとで,捕まりたかったのかも知れない.ただ,大外刈りを決められる前には泣きながら「死にたいんだから死なせてくれ」と言っていたから,辛かったのは確かだと思う.大橋(たぶんASK大橋というYR橋の隣のもっと大きい橋)からも飛び込んだけど漁船に助けられたとも言っていた.


という風に,昨日は充実した日だった.田舎でも事件は起こる.そして自分は事件に巻き込まれやすい性格だ.