数学とか教えているけど、数学をお金の計算に使ったことがない純真な小生。今日は生まれて初めて神聖なる数学を銭勘定に使う。
とりあえず複利・積立・ローンの返済に関する計算をしてみて、その結果を眺めて妄想する。
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①まずは複利の計算。$x_0$円を預金口座に入れたとする(または$x_0$円の金融商品を買ったとしてもよい)。年利が$\alpha $%のとき、$n$年経過後にはいくらになっているか?
\[
r=1+\frac{\alpha}{100}
\]
とする(例えば$\alpha=5$%なら$r=1.05$)。1年経つと元本$x_0$円は利息が付いて$r x_0$円になっている。複利では、もう1年経つと、この利息込みの$r x_0$円が$r$倍されるので、$r \times rx_0 = r^2 x_0$円になっている。これを続けていくと、入金してから$n$年経過したとき預金額は
\[
x_n = r^n x_0
\]
円になっていることがわかる。
したがって、$x_n$は$x_0$に比例し、$n$と共に指数関数的に増加する。$\alpha=3, 5, 7$の場合について、経過年数$n$と$r^n$の関係を表にしたのが下の画像。
当たり前だけど、複利の凄さと、投資には時間が重要だということがわかる。5%の年利でも20年待てば500万円が500万円*2.65=1,325万円になるのだ。
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②次は積立の計算。頭金(というか始める時点の預金額)を$x_0$円として、年額$\delta x$円を積み立てていく。金利は年利で$\alpha$%とする。$n$年経過したとき、いくら貯まっているか。
初めに1年分$\delta x$円を入金したとする。1年経つと利息が付いて
\[
r \times ( x_0+\delta x ) = rx_0 + r \delta x
\]
円になり($r=1+\frac{\alpha}{100}$)、新たに$\delta x$円振り込むから、合計で
\[r x_0 + (r+1) \delta x
\]
円になる。さらに1年経過すると、これに利息が付いて新たに$\delta x$円が振り込まれるので、
\[
r \times [ r x_0 + (r+1) \delta x ] + \delta x = r^2 x_0 + (r^2+r+1) \delta x
\]
円になる。これを一般化すると、$n$年経過したとき資産は
\[
x_n = r^n x_0 + (r^{n}+r^{n-1}+\cdots + r+1)\delta x
\]
円になっていることがわかる。
さらに、数学公式
\[
r^{n}+r^{n-1}+\cdots + r+1 = \frac{r^{n+1}-1}{r-1}
\]
を使うと、
\[
x_n = r^n x_0 + \frac{r^{n+1}-1}{r-1} \delta x
\]
とより計算が楽な形になる。簡単のため頭金は無し($ x_0=0 $)とすると
\[
x_n = \frac{r^{n+1}-1}{r-1} \delta x
\]
である。
そして、$\delta x$の係数$ \frac{r^{n+1}-1}{r-1} $を表にすると次のようになる。
毎年の積立額$\delta x$にこの表の値を掛ければ、何年後にいくらになるかわかる。例えば、年率5%で1年に60万円(1ヶ月に5万円)を20年積み立てると、60万円*35.72=2,143万円になる。元本は60万円*21=1,260万円だから、2,143/1,260=1.70倍に増えたことになる。一般には、$x_n$を$x_n = \frac{r^{n+1}-1}{(n+1)(r-1)} \cdot (n+1)\delta x $と変形すると元本が$ (n+1)\delta x $だから、その係数$\frac{r^{n+1}-1}{(n+1)(r-1)} $が金利ゼロの場合の積立額(つまり元本)の何倍になっているかを表している。これを表にしたのが下の画像。
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③最後は、積立の計算に非常によく似たローン返済の計算。年利$\alpha$の$x_0$円の負債があり、毎年$\delta x$円ずつ返済するとする。$n$年後に返済額はいくらになっているか。
ローン開始時にまず$\delta x_0$を返済したとすると負債額は$x_0-\delta x$円。これが1年経つと$r \times (x_0-\delta x)$に増え($r=1+\frac{\alpha}{100}$)、2回目の支払いで$\delta x$円が引かれるので、負債額は$r x_0 - (r+1) \delta x$円。もう1年後には、これに利子が付き、3度目の返済が入るので、負債額は$r \times [ r x_0 - (r+1) \delta x ] -\delta x = r^2 x_0 - (r^2+r+1) \delta x$となる。これを一般化すると、$n$年後の負債額は$x_n=r^n x_0 - (r^n + r^{n-1} + \cdots + r+1) \delta x = r^n x_0 - \frac{r^{n+1}-1}{r-1} \delta x$となり、先ほどの積立の一部符号を変えただけの式となる。
この式を使えば、**年後までに返済を終わらせたければ、毎月いくら返済すればよいかなどの計算ができるし、住宅ローンなどの巨額の負債の場合には、返済開始の頃は殆ど利息分しか払っていないなどの悲しい現実を知ることもできる。