2014年10月13日月曜日

【大学教員への道】 模擬授業

大学でのアカデミックポストの選考は書類選考(一次審査)+面接(二次審査)が定番であるが,ときに面接は模擬授業を含むことがある.また,大学の理事会が人事に高い関心・権限をもつ大学では,上記の面接の後に役員面接(三次審査)が入ることもあるようだ.

今日は模擬授業について書きたいと思う.ただ,小生は現在のポストを得るまで6回の面接を経験したものの,そのうち模擬授業を含むのは1回だけだったので一般論を書くことはできない.一つの事例として捉えて頂きたい.また,結果的には不採用であったことも言い添えておく.

応募から採否通知までのスケジュールはここで述べたところの書き方では以下のようである.

【関東地方理科系私立大学(助教)】 
応募〆切:9月10日
面接通知:9月24日(14日後)    
面接+模擬授業:10月15日
採否通知:10月19日(不採用)

書類選考を通過した知らせは電子メールで届き,そのメールに面接の日程などが書かれた文書が添付されていた.(不採用の通知は郵送されてきたような気がする.)面接当日のスケジュールは次のようだった.
  • 研究発表20分+質疑応答10分
  • 模擬授業20分+質疑応答10分
  • 会食および懇談30分
最後の「会食および懇談」というのを見たとき,「!?」となったが,「面接後に昼食に誘われ,そこでの談笑が本番の面接だった」という恐ろしいエピソードも聞いたことがあったので,その手のものだという察しは付いた.もしかしてナイフとフォークが出てきて食事するのか?とも思ったが,実際にはケーキと紙コップ入りのコーヒーが出され,(少し油断をさせた上で)面接の続きをやるという感じのものだった.

面接官は12,3人いた記憶がある.この採用人事にかかる委員会から5,6人の教授陣が出席し,物理を教えているその他の先生方(准教授や助教の方々)も応援要員として出席しているという感じだった.

ちなみに,面接官の人数は大学によってまちまちである.小生の経験では,最少は3人,最多は14,5人であった.印象としては,お堅い大学(伝統ある大学や採用などに関してキチッとしたマニュアルがある大学)ほど面接官の人数が少ない傾向にある.また,関連分野の教員がその大学に少ないから少人数だろうと油断していると,人海戦術的に大人数で面接をしてくる場合もある(向こうも必死なのである)ので注意が必要である.先方から面接の概要を教えてくれる場合などを除いて,面接官の人数を前もって知るのは難しいと言えるだろう.

さて,問題の模擬授業の内容だが,物理教員としての採用だったので,理工学の一般教養として教える機会の多い「力学」の中からトピックが5つほど与えられ,そのうち一つを選択し「もしそのトピックを中心として90分の授業を行うなら,どのように授業を組み立てるか」を20分で話すというものだった.(そういう意味では「授業の内容を説明する」というもので,本来の意味での模擬授業とは違う性格のものだ.)ただし,受講者は高校で「物理Ⅰ」のみを履修し,「物理Ⅱ」は取っていない学生という条件が付いていた.自分は慣性力というトピックを選んだと記憶している.

パワーポイントを用いた20分のプレゼンの後に出た質問としては
  • トラペに書いてあることを90分の授業で全て話せるのか?
  • 慣性力を教える前に,慣性系の定義は既に教えてあるのか?
  • 四則演算が不自由な学生に物理を教えたことはあるか?
  • 自身が苦手だった数学を克服した経験があるらしいが,どうやったのか?
  • 5つのトピックのうち,何故「慣性力」を選択したのか?
  • 今回の発表のような初等的な説明で授業を展開するのは初めてか?
  • 過去に教えたことのある学生は高校で「物理Ⅱ」も履修済だったか?
などであった.

初めての模擬授業とあって少し気負い過ぎ,内容を詰め込みすぎたのかも知れない.ちなみに,小生はその時点で,いわゆる学力トップクラスの大学で「力学」を含む科目に対して非常勤講師として教育経験があったが,面接官はトップクラスでない大学での教育が本当に出来るかをかなり心配しているようだった.その線の質問には,塾・家庭教師・予備校でのアルバイトの経験や,自分がどのように苦手科目(数学)を克服してきたかを必死に語った記憶がある.このとき思ったのは,採用する側は「この人がウチの大学の教壇に立ったらどうなるか?」というのをコチラ側より遙かに強く意識しているということである.