勝間和代の『お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』(光文社新書2007年)を読んだ。TSUTAYAで100円だった。金融・経済に関する本を読み始めて4冊目。(3冊目は『株式投資のカラクリ』)
カツマーと呼ばれるこの人を崇拝している人々(キャリアウーマン層?)がいるというのを聞いたことがある。この本では、実際に金融・経済に関わる人間の立場で、金融リテラシーについてアカデミックな内容にも触れながら解りやすく解説しており、平易ながら説得力をもつ説明の上手さは流石と感じた。
内容としては、日本人は、お金というと預金・住宅ローン・生命保険ぐらいしか頭にないが、それらを金融商品という立場から見たとき、如何にしょうもないもので、それらに回すお金を投資信託を初めとする金融商品に分散投資すれば、どれだけ有益かを説いている。また、労働所得だけを頼りに所得を増やそうとすると、長時間労働になる傾向にあり、金融リテラシーを身につける余裕がなくなり、さらに労働が長時間化し、投資どころではなくなる、という負のスパイラルに陥ることの危険性を指摘している。逆に、金融リテラシーを身につけ、所得の何割かを運用益で賄うことで長時間労働より解放されれば、投資に関して勉強する時間も生まれ、更に運用の腕が上達するという正のスパイラルが生まれると言っている。延いてはそれらが、少子化やワーク・ライフ・バランスの問題の解決にプラスに働くと言っている。
薄い新書ながら内容はかなり盛りだくさんなので全てを紹介はできないが、目次通りに概観すると以下のよう。
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第一章:金融リテラシーの必要性
日本人は欧米人に比べてリスクを回避する傾向にはないにも関わらず、依然として日本人の金融資産の中で「リスク資産」(株式・投資信託・債券)が占める割合が「安全資産」(現金・預金・保険・年金)に比べて低いことをデータを基に指摘しており、それは金融教育の遅れが原因であると分析している。
安全資産の割合が高いということは、収入の殆どを労働に頼らなければならないことを意味しており、ワーク・ライフ・バランスに悪影響を与える。また、統計的にはほぼ確実に利益を出せることがわかっている投資があるのにも関わらず、投資をしないのは重大な機会損失であり、非常に残念であると嘆いている。
第二章:金融商品別の視点
ここでは、定期預金、国債、株式、為替、不動産(住宅)、REIT(不動産投資信託)、投資信託、生命保険、コモディティ(商品ファンド)、デリバティブ(先物・オプション)と言ったものを金融商品という立場から、かなり丁寧に解説してくれてる。(ただし、先物やオプションに関しては、予備知識がない人にはここを読んでも何のことやらわからないと思う。)
特に、素人が個別銘柄株を取引する(テクニカルでもファンダメンタルズでも)ことの無謀さや、景気が良かった頃は(日本人が大好きな)住宅ローン・生命保険が投資になっていたが、現在では如何にしょうもない金融商品であるかを痛烈に批判している。特に、住宅ローンに関しては、民官産総出の「国家的陰謀」とでも言わんばかりである。住宅ローンを組む頭金があれば、賃貸に済みながら投資信託に回せと言っている。また、生命保険は今すぐ逓減型(補償額が年々減少する)への変更を考えて減額した分を投資資金に回せと言っている。
第三章:実践
この章では具体的にどのように資産運用をスタートさせたら良いか提案している。
まずは、例えば毎月4万円を、国内株式・日本国債・外国株式・外国債券の4種類の投資信託へ1万円ずつ積み立てることを勧めている。その際の注意点として、ロードフリー(購入手数料がゼロ)のインデックス投資信託(機械が運用するので信託報酬が安い)を選ぶことをあげている。そこから初めて、半年ほど金融に関する「ながら勉強」を続け、ボーナスが出たらアクティブ投資信託(REIT、グロソブ債、BRICs投信、商品ファンドなど)にもチャレンジする。その後、リターンが安定してきたらリスクマネジメントを学びつつ、投資信託以外の商品(ETF、外貨預金、FXなど)にもチャレンジしていく。資産のリバランス(再配分)を1,2年に1回行う。ということを提案している。
投資におけるリスク分散の重要性が繰り返し述べられているが、そもそも投資信託はプロが分散投資してくれる商品なので、その点ではそれを買う時点で分散している。さらに、日本・海外の株・債券の4つの投資信託に分散することは、さらに分散効果が大きくなる。また、投資信託を一度に購入するのではなく定額で積み立てるということは、時間的なリスク分散(ドルコスト平均法という)も自動的にしていることになっており、上の方法はリスク分散という点では非常に優れていることがわかる。欠点といえば、すべて自動なので「投資している」という感覚が味わえない点か。
第四章:金融を通じた社会責任の遂行
この章では、資本主義がもつ問題点(格差の拡大や環境破壊など)を解説し、個人投資家は投資先を選ぶことで、金融を通して社会貢献できることを説いている。
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